『request』短編集
「優しくされると私のこと好きなのかなって勘違いしちゃうや~」
「え。なんでそーなんの…怖いんだけど」
「冗談だよ冗談!!!」
分かりやすく嫌そうな顔。
どうやら泉くんには冗談が通用しないみたい。
「葵、泉。みんなもうバスにいるらしいから、俺らも戻るぞ」
「はーーい!!!」
「はい。」
帰って来た蒼空さんにそう声をかけられ、ベンチから立ち上がる。
「葵さん。」
その途端、後ろにいた泉くんにも声をかけられると
「葵さんは…俺の唯一の同期だから。ただそれだけだよ」
いつもは無表情なその顔に、優しくて穏やかな微笑みが追加された。
初めて見るその表情に、なんだか距離が縮まった気がして────
「私も!泉くんは私の大切な同期だよ!!」
満面の笑みでそう返事をした。
「蒼空さーん!!泉くーん!!早く早く!みなさん待たせてますよーー!!!」
社員旅行。
この2日間いろんなことがあったけど、
「元気だなあいつ…」
「スキップしてますね」
「早く早く!!先に行っちゃいますよ~!」
私にとっては全部が良い思い出で
「まあ……元気なところが葵さんの取り柄ですから」
「ははっ、確かに。」
来てよかったと、
そう思えるような日!
社員旅行編 ~完~