『request』短編集


ワクワクしながらその返しを待っていた時、





「わっ!」





突然浅川くんはキッと鋭い瞳と赤らんだ頬で私の額にシャーペンをさっきよりもちょっとだけ強めにツンっとあててきた。





「なになに!もう起きてるよ!?」


「………………」


「現実だってちゃんと理解して───」






──────あれ?





浅川くんの頬はまだ赤くて、そのまま何も言わずにシャーペンを無地のペンケースへとしまう。



そのペンケース高校生の頃から使ってるよね?

新品並に綺麗だし大切に使ってるんだなあ~……



って、そうじゃなくて!!!





「私のこと陽菜って、まさか……本当に?」


「っ!!」


「あ!まって!!逃げないで!!」





私達以外誰もいなくなった教室内で私と浅川くんは謎の追いかけっこ。



せっかく無地の綺麗なペンケースにしまった文房具達はチャックを閉める前に浅川くんが急に立ち上がったことで机から落ち、散らばった。



けどそんなことお構い無しに私から距離を取ろうと逃げ出した浅川くんを追う私。





「ねえ!待ってよ浅川くん!!一緒に文房具拾おう!?」


「いいって…!ほっといて!!」


「ダメ!!ほっとけない!!」





高校と違って広い広い大学の教室。浅川くんの逃げ場は沢山あるけれど、数分も経てば浅川くんの脚が止まる。



私は元運動部なだけあって体力には自信があるのだ。

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