『request』短編集
「うん。私どんくさいからさ~…大事な案件はこうやって立派に仕上げてくれる人に頼みたいよね」
「………………」
「私なんてほぼシュレッダーに紙通すだけの作業ばかり。蒼空さんがいる時は一緒に仕事させてもらうんだけど今は出張でいないし……」
「……ごめん」
「ん?なんで謝るの?」
「酷いこと言った」
「酷いこと?なんで?
泉くんは正しいことを言っただけだよ。
……ごめんね、本当は今日泉くんが残業しているの知ってたんだ。手伝いたいって思ってたんだけど企画書なんて作ったこと無いし邪魔になるだけだと思えて声をかけられなかった。でも、それでもやっぱり気になって……こっそり覗きにきたら泉くんがタバコ吸ってたから話しかけちゃった」
「え。じゃあなに、家の鍵なくしたのは嘘だったの?」
「あ、それは本当。」
「マジかよ」
「あーーー現実逃避~…」
その場にしゃがみこむ葵さん。
本日2度目、耳を塞ぐ。
ああもう………なんだかアホらしくなってきた。