『request』短編集



「その辺にあるの好きに使っていいから」


「…………………」





は……


初めて男の人の家に上がっちゃったぁ…





ワンルームにベッドとテレビ、それから机。ありきたりな物が揃う部屋だけど、そうであっても家具の色とかデザインとかやっぱり女の私の部屋とは全く違う。



だから……かな。全く落ち着かない。





「葵さん聞いてる?」


「へっ?!は、はい!なんでしょう!?!?」


「ベッド、使って。俺は下で寝るから」


「ベッ…?!」


「あと風呂入るならそこの引き出しに着替え入ってる。スウェットとか好きなの着ていいよ」


「お、おふっ…?!」





泉くんなんだか淡々としすぎじゃない…!?

こういうの慣れてるの…!?





(どどどどどうしよう。ついてきちゃったけどついてきて良かったのかな!?)





泉くんとの心の距離が爆速に近づいてそうな、こんな状況になってしまった原因は私が家の鍵をなくしてしまったからで。


一緒になって探してくれていた泉くんに唐突にも「とりあえず俺の家に来なよ」と提案されたのだ。




たぶん鍵はもうないと判断して時間も時間だったからそう提案してくれたんだと思う。

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