『request』短編集
風呂から上がるといつもなら誰もいない部屋の中で寝息が1つ。
スースーと落ち着いた音色で葵さんは眠りについていた。
(寝るの早)
相当疲れていたんだな、と。
付いたままの電気を消す。
ベッドを背もたれにしてその場に腰掛けた。
テーブルの上に置かれた紙には『服借りました!!洗って返しますごめんなさい!!』とご丁寧にそんなことが書かれていて、
(勝手に使っていいって言ったのに)
おっちょこちょいだけどこういう所は律儀で、着ていたスーツは端っこの方に綺麗に畳んであった。
「………………」
シワになるんじゃ、そう思ったけど
勝手に触っていいはずが無い。
だから自分の分だけハンガーにかけるが、なんだかそれも良くない気がして。
(紙に…書いておけばいいか)
葵さんと同じように紙に書いた。
『ごめん。勝手にスーツ触った。シワになるかと思って』っと。