『request』短編集
ちゃんと断りを綴った後に押し入れの中からハンガーをひとつ取り出して葵さんの分を引っ掛ける。
自分とは全く違うサイズ感に思わず躊躇ってしまって、意味もなく目を細めた。
そしてブラウスに手をかけた……その時。
「っ!?」
カシャン!と高い音が鳴った。
不意な出来事に肩が跳ね上がる。
(な、なに…)
自然と葵さんの方を向いてしまうけど、葵さんは深い眠りに入ってるみたいで目を覚ます気配は全く無し。
その事実にホッと安心して音の鳴ったそれを見下げると、
「…………あ。あった」
自分の物ではない鍵がひとつ。
床に落ちていた。
(まさか……この中に?)
俺の手にはブラウス。
それを手に取った時に鳴った音。
…………どうやら胸ポケットに入っていたらしい。