『request』短編集
近づく距離③ ー葵編ー
近付く距離③ ー葵編ー
(ん……あれ…どこ?ここ……見覚えないなぁ…)
寝起きでボヤける視界。
見える景色は見覚えのない場所。
ふかふかのベッドはここから出たくないと思えるほどで、身に覚えのあるこの香りがなんだか心地良い。
(えーー…と、なんだっけ?確か鍵をなくして、それで…)
「…………、っ!?ここ!!!!」
ガバッと倒していた身体を起き上がらせる。
ここ!!泉くんの家じゃん…!?
あわあわと慌てふためいていると
近くで「ん…」と声が聞こえた。
「い、いいいい泉くん…!?!?」
「ん…?………あぁ…、おはよう…」
「おはよう!今日も良い天気だね~…ってそうじゃなくて!!!」
ウトウトとどこか幼くて、
まだ眠たそうに目を擦る泉くん。
どうやら朝に弱いみたい。