『request』短編集
「え、蒼空さん行かないの?」
「ここで待ってる」
「……さては私に内緒でプレミアムストロベリーキャラメル味のポップコーン食べるつもりでしょ」
「そんなに食い意地張ってねーわ。
ほら、もー始まってるみたいだし早く行ってこい」
「食べるなら私の分も残しといてよ!」
「はいはい」
その子は「行きましょう!」と華に声をかけてパレードが始まっているらしいその場所へと向かっていく。
その後ろ姿を眺めながら、俺は隣にいるその人へ喋りかけた。
「…久しぶりだね」
「ああ、久しぶり」
「こんな所で会うとは思わなかったよ」
「そうだな」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
……会話がまるで続かない。
そりゃそうだ。桜井に嫌われても仕方がないことをしたのは俺だから。
なのになんで桜井はここに残ったんだろうと、俺はちらりと桜井の姿を盗み見た。
柵のようなところに身体を預ける俺と桜井。
静まり返るこの空間は周囲から見れば異様な空間だと思われてしまいそうな。