『request』短編集
「葵さんと私が……似てるの?」
「……ちょっとだけな」
嬉しいようで嬉しくない。
だって
そうだとしたら
いつの日か葵さんのことを─────
「けど、恋愛感情は全くない」
「っ、」
「似ていたとしても俺は月姫しか興味ねぇよ。
だからお前も─────」
気がつけば後頭部に回されていた手
「俺のことだけをずっと好きでいろ」
熱があるくせに
ツラそうなのに
「もう…っ…」
いつまで経っても
どんな状況でも
蒼空さんに勝てる気がしない。
今欲しい言葉をちゃんとくれる所とか
今して欲しい事とか
「泣き虫な所はまだまだ健在だな」
蒼空さんに引き寄せられると、涙が枕を静かに濡らしていく。
「…蒼空、さん…」
「ん?」
「キス……ダメ?」
むくりと体勢を戻せば
蒼空さんは眉尻を下げていて
「うつるから、ダメ」
そう言われると分かっていた、が。
「っ!おいっ……」
うつってもいいや
「……大好き。」
今はあなたに対する愛が止まらないから。
嫉妬という名の治療薬
~完~