『request』短編集
(何してんだアイツ…)
『何でも屋』 通称" 便利屋 "に新しい従業員としてやってきた月姫が、ここに入社して3ヶ月が経った今日。
事務所の窓から外を眺めれば、1本の木に向かって何度もジャンプをしているアイツの姿。
大学の講義が終わり、事務所に来た瞬間初めて目にしたのが月姫のそんな姿だった。
「アイツ、今なんか依頼持ってんの?」
「んー?月姫ちゃんのこと?月姫ちゃんなら『飛ばされた帽子を探して』っていう依頼持ってるわよ」
ああ、なるほど。よく見ればその木の1番上に帽子らしき物引っかかってるわ。
(それを低身長のくせにジャンプして取れると思ってんのか)
その考えに呆れて、置いた上着を再び着る。
「あら。どこ行くの?もう少しでケーキ焼けるわよ~?」
「それまでには帰る。」