『request』短編集
「泉くん!!!」
仕事終わり。ちょうど会社を出た後のこと。
「なに?葵さん」
「駅まで一緒に帰らない!?」
「いいよ」
断る理由もないし、そう頷けば葵さんは右手でガッツポーズをしてみせる。
唯一の同期である葵さんとは最近やたらと関わることが増えた。
今日みたいに一緒に帰ることとか
お昼ご飯を一緒に食べることとか。
同期なら至って普通にする程度のことだろうけど、最近まで関わりのなかった俺達には少しばかり意外なことだったりもする。
「最近課長がね私に仕事をまわしてくれるようになったんだけど…」
「へえ。良かったじゃん」
「でもそのどれもが別にこの作業いらないよね…?って思えるようなやつばかりでさぁ~…」
「例えば?」
「字を大きくするとか、色変えるとか。もはやパソコンの練習みたいな……って。笑うところじゃないよ!?」
まるで学校のパソコン教室のような。
もはや会社がそんな場所と化している話を聞いては笑わざるを得ない。