『request』短編集
部署に戻ってくると、もう帰る準備をする人達がチラホラ。
そんな中ちらりと泉くんを盗み見る。
だけど姿を見ただけでカッと身体が熱くなっては勢いよく視線を逸らした。
自覚した途端にこれだよ……
ドキドキと煩いこの音を沈めたくて、私は近くでかたまっていた先輩達の輪に入り込んだ。
「あ。葵ちゃんおかえり~」
「ただいまです!!
皆さん集まって何かあったんですか?」
「それがさぁ~この子来週から出張お願いされたらしくて。あれ……と一緒に行くらしいよ」
「え。あの人とですか…?」
あの人とは、私達女性社員の中で良くない噂をされている1人の男性社員。
あの人距離感近いし、ちょっと嫌な目で見てくるんだよね…。胸の大きい人なんて特に。
それはもう…鼻の下を伸ばしてなんだかとてもいやらしい目で。
「しかも1泊!もー最悪!!
はぁ……誰か違う人と変えてくんないかな」
「課長に言ってみたら?」
「えー…なんて言うの?
いやらしい目で見てくるから嫌ですって?
そんなの理由になんないって~…
あいつが否定したらそれで終わりだし」
「まあ確かにそうだね~」
その話をもちろん出張なんて行ったことがない私はただただ聞いてるだけになってしまって、あの人と2人では確かに嫌だな~…と考えていた時。
「でもさ、アイツその日違う所に出張決まってなかったっけ?」
「え、うそっ」
「ほんとほんと。
課長忘れてるんじゃない?それ。」
「聞いてくる…!!!」
希望を持って課長の元へと向かった先輩。
少しして帰ってきた先輩の顔は満面の笑みで。