『request』短編集
気がつけば帰宅時間になっていて
浮かない気分でロビーへとおりてきた私。
(土砂降り……)
なんだか私の心の中を表してるみたい…
ボウっとそんなことを考えてカバンの中から折り畳み傘を取り出す。…と。
「葵さん」
「ひゃあ!?」
びびびびびっくりした…!!!
突然後ろから声がして折り畳み傘を床に落としてしまうと、声をかけてきた本人である泉くんがそれを拾う。
「ごめん。驚かすつもりじゃなかった」
「う、ううん!!
大丈夫!!どうしたの!!?」
「嫌じゃなかったら……なんだけどさ」
「うん?」
泉くんは拾ってくれた折り畳み傘を私に差し出すと
「入れてくれない?」
「ん?
………あっ、もしかして傘忘れたの??」
「………………」
照れ臭そうな顔をする泉くんがなんだか途轍もなく可愛い!!!
「いいよ!全然!!
この小さな傘でいいなら…!」
バサッと広げると、その傘はもう一度泉くんの手に渡って。
「全然いい、ありがと。俺持つね」
「ッ……!!」
え、笑顔…!!からの紳士的な対応…!!
胸がきゅーーーんと高鳴ってしまう。
さっきの落ちていた気分はどこにいったのやら。
最高だと叫んでしまいたい!!!