『request』短編集
酷い顔がバレないようにと帽子にマスク、それから眼鏡を掛けてお顔完全防御体勢で外出すると、空は昨日と全く正反対の色を見せていた。
(暑い…)
日差しも眩しいし…
昨日の荒れた天候は一体何処に行ったのやら。
(こうやって晴れていたら想いを伝えることもなかったのにな…)
一緒の傘に入って、肩と肩が触れてしまうそんな距離にいて。
勘違いだと、そう遠回しに言われずに済んだのに。
「………………」
外に出ても変わらず落ちたテンション。
日差しといい、太陽の明るさは今の私とは正反対。
なんだかもう、今はその明るさが鬱陶しいとも感じてしまう。
寧ろ昨日のように荒れた天候であってほしかった。
大雨が降ってくれるものならそれで頭を冷やせるな~って。
そうできるなら徹底的に冷やして無かったことにしよう。
昨日のことは全部忘れてしまいたい。
間違ってた。
泉くんの言う通り、私が間違っていたんだ。
泉くんに対するこの想いは恋愛としてじゃない。
ただの憧れだと、そう思っていよう。
そうすれば苦しくない。
この想いも、そのうち消える。
………はずだったのに。