『request』短編集
「…………っ」
言葉が出なかった。
頬に落ちてきた葵さんの涙は
この寒い時期に似合わず温かくて
「葵さんごめん…」
気がついた時には抱きしめてた。
「泉くん…」
「ごめん」
「泉くん…っ」
「ごめん……」
泣かせてしまったこと
悩ませてしまったこと
否定したこと。
それから─────…
「移したら、ごめん」
苦しいと言われてしまうかもしれないけど
「でも、その時は俺が看病するから」
ギュッと力強く抱きしめて
「だから……」
至近距離で伝えさせて欲しい。
「もう少しだけ、そばにいてよ」
今までで1番近い、この距離で。
そばにいてよ
~完~