『request』短編集
その運命へと導いたのが、『川で落とした指輪を探して欲しい』という依頼。
さすがにあの広い場所から探し出すのは無理があると思っていたが、ここは『何でも屋』なわけで。
「っ…!?なっ…!お前バカかっ!!」
"頼まれた依頼は出来ることなら何でもする"
「うそ……」
この依頼にチビで鈍臭い月姫を参加させたことを
俺の手をしっかりと掴んだまま、俺を道連れにして川の中へと落ちたその瞬間はとてつもなく後悔した。が、
「クッソ…コイツ後で覚えてろよ…!」
それと共に意識の無い月姫を抱きかかえたとき、背筋がゾクッとするほどに不安になった。
この真冬にその小さくて華奢な身体が身構えてないまま冷たい水の中へと落ちたのだから、当然心配になる。
このまま目を覚まさなかったら、依頼が完了した時のあの嬉しそうに微笑む姿はもう見れないんじゃないかと。
まあ……良く言えば、
この出来事が無ければ
今でも自分の気持ちに気づけずにいたと思う。