『request』短編集
そんな浅川くんはいつも紙を後ろに回す時、手だけを私に向けるのではなく、身体ごと、少しだけ振り向いてくれる。
その時に見える浅川くんの顔を私はいつもボーッと眺めてしまって、
「あっ、ごめん!」
ワンテンポ遅れて受け取るの。
それでも浅川くんは怪訝に思うどころか、何も言わずにスっと前を向いてしまう。
もう少し見ていたかったけど……
今の私は
後ろから眺められるだけで満足だ。
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