『request』短編集






その紙はなんとなく自分の部屋の引き出しにしまっていたから、家を追い出されたものの、こっそり中に忍び込みその紙を持ってその場所へ。



そして私は" 陽葵何でも屋 "というお店で『カップケーキの作り方を教えて下さい』と頼み込んだ。



そのお店のおかげで膨らむ気がなかったカップケーキも無事膨らんで、この3年間のうち1番上出来な物が出来上がる。




何度失敗しても文句1つ言わずに優しく手伝ってくれた心音さんと、ずっと励ましてくれた月姫さん。



そして、失敗した物をずっと食べてくれていた男の人2人には感謝しかないよぉ…






すっっっごく綺麗に出来たそれを



まだバレンタインまで数日あるというのに、早く渡したくて仕方がなくて。



次の日、早速渡すことにした。


学校だとまた誰かに邪魔されるんじゃないか、って。



だからバレンタインチョコを渡せる最後のこの日は、どうかちゃんと渡せるようにと浅川くんの家の近くで待ち伏せ。



浅川くんの家はパン屋さんを営んでるらしい。その事は浅川くんが友達と話している時にこっそり耳にしたの。





浅川くん、よく学校でパンをお昼ご飯にしていたしね。



そのパンを食べる浅川くんは、いつも優しい顔をしてるんだ。




本当に幸せそうに。

そのパンが大好きだと言わんばかりに。





浅川くんのそんな姿を見る度に、


いつか私も、浅川くんが作ったパンを食べられたらなって。……ちょっとした願望。



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