『request』短編集
「っ!?」
ガブッ、と。
さっきまで口元を綻ばせていた月姫が
俺の首元に噛み付いた。
それも、割と強めに。
「コイツ…!」
その痛さに眉根を寄せれば
「近づかないで!!蒼空は私のものなのーーっ!!」
再び普段は言わないようなことを口にする。
お前、いつも呼び捨てしねーだろ。
当然ビックリした表情を見せるその女性に「すみません」と俺が頭を下げる。
頭を下げることはまだ良いが、頼むからもう噛み付くなよ。マジでいてぇーから。