『request』短編集






「………綾瀬さん、」


「んー?どしたの?」





さっきあげたパンをもう食べきったらしい綾瀬さんは「ごちそうさま!」と手を合わした。





「ホワイトデー……何欲しい?」


「えっ!?」


「いや…お返ししなきゃ、だから…」





お返しなんて人生で初めてで


何を返せばいいのか分からなくて



考えた末、

直接聞くのがいいんじゃないかと思った。





「お返し、くれるの!?」


「うん……まぁ」


「えぇっ!!いいのにーー!!嬉しいっ!実はちょっと期待してたんだよね~」


「(また心の声漏れてる…)」





あの日から、綾瀬さんはよく心の声を漏らす。それはもう分かりやすいほどに。





「じゃあ!コンビニの10円チョコがいい!あれ私好きなの!本当に好きだけど、本当の本当のことを言えば浅川くんが作った手作りパンが食べたいな~」





分かりやすくて逆に有難いけど…




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