『request』短編集
(………ああ、でも)
きっと、渡しても後悔しない。
綾瀬さんなら
「え、えっ!!?」
美味しいって食べてくれる気がして。
何も言わずに綾瀬さんへパンの入った袋を手渡した。
なぜか顔を見れなくて、下を向いて。
「くれるの!?」
「うん…」
「やった!!パン大好き~!」
そう言う綾瀬さんは、きっとまだこのパンを僕が作ったと思っていない。
その袋から取り出せば、気づくはず。
見た目の悪さに
「わぁっ……」
誰が作ったかなんて。