『request』短編集
「───え、綾瀬さん?!」
「うぅっ……」
綾瀬さんが突如ボロボロと涙を流すから
戸惑って戸惑って、
どうしたらいいのか分からなくて
「ご、ごめん。ほんと無理して食べなくていいから……」
「違うっ…違うの…!!」
涙を拭って
「美味しいっ…すごく美味しい…!!!美味しすぎて涙が止まんないのっ……!」
「綾瀬、さん…」
「ほんとに、美味しいっ…今まで食べた中で1番美味しいっ」
泣きながら、それでもそのパンを食べ進める綾瀬さん。その姿に心のどこかがとても熱くなる。
熱くなって熱くなって、けれどもあたたかくて。
「そんなに急いで食べたら、喉に詰まるよ…」
そんな彼女の目元に指を添えて、溢れ落ちる涙を拭った。