『request』短編集
その行動は本当に無意識で
僕自身も自分のその行動に驚かされた。
拭ってあげたい、そう思ってしまったから。
美味しそうに食べてくれるところ
何度も「美味しい!」と言ってくれるところ
そんな姿が見たくて、キミにパンを作りたいと思った。
「……今度は、もっと立派なパンを作るから」
そしたらまた
「綾瀬さん、食べてくれる?」
キミに食べて欲しい。
僕が初めて作った
出来映えの悪いクロワッサンを
美味しい、と。
泣きながら食べてくれたキミに
また、食べて欲しいと思った。