宛先不明ですが、手紙をしたためました。
便箋を持つ指に力が入った時、楓が心配そうに名前を呼んでくれた。
「何か言われた?」
図星だった。
しかし、そこを覚られないように、笑って誤魔化した。
それでも、楓はじっと私を見つめている。
「私が、あの子に返してこようか?」
強引に渡された物だとしても、私が情けで受け取ってしまった。
受け取った時点で、私の責任だ。
それなのに親友に、後始末だけをさせるなんて、最低極まりない。
喉でつっかえる何かを、ぐっと押し込めた。
「大丈夫! 受け取っちゃったのは、私の弱さだから。責任持って、彼女の愛しの彼にお届けしてきます」
ね、と何とか楓を納得させようと、念を押す。
それに、楓はやや呆れていた。
「これで、本当に最後にしてよね。私は本当に、華世が心配だよ」
「ご、ごめん。もっと強くなるね」
「うーん。別に華世は、そのままで良いよ。私が守るから」
「っ……! やだ。男前」
「惚れんなよ」
「もうっ、手遅れ」
通常のおふざけの空気になったことで、安堵した。
変に、深追いされずに済んだ。
海藤くんにラブレターを渡しに行くのは、これで本当に終わり。
これ以上は、彼女たちの為にならない。
次こそは、ちゃんと断らなければ。
そう思ったら、手が震えてしまった。
これも、私の弱さ故だ。
私よ、もっと自分を持ちなさい。
海藤くんに渡すタイミングまで、手は震えるのを止めないだろうけれど。
それでも。