宛先不明ですが、手紙をしたためました。
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掃除の時間、私と楓は離れてしまう。
席順の都合上、班が違うからだ。
私は教室、楓は西棟2階の階段。
そして、今、私はゴミ箱を2つ両手に持ち、1人でゴミ捨て場を目指していた。
道のりが遠いことにうんざりしながら、歩いていると、途中のベンチに誰かが座っていることに気が付く。
「あれ……」
「ああ、栗山さん」
「か、海藤くん。こんなところで、何してるの?」
「サボり、かな」
みんなが嫌々でも頑張っているのに、サボりはさすがに頂けない。
「健太くんは?」
「何? あいつのこと、気になんの?」
「へ? 別に、そうじゃなくて。いつも一緒なのに、って思っただけ……」
「へぇ?」
海藤くんは、ニヤリと笑う。
いつもの爽やかな笑顔とは違う、初めての表情にドキリとした。
海藤くんは少し間を置くと、そのまま続ける。
「あいつは真面目に、トイレ掃除してると思うよ」
「そう……」
別に特に話題もなく、黙り込んでしまう。
「ゴミ捨て、途中なんじゃないの?」
指差されたゴミ箱を一瞥したとき、自分のブレザーのポケットを見た。
忘れていた訳じゃないけど。
ポケットには、あの子のラブレターが入っている。
──今、渡しても、大丈夫かな。
こういうのを渡す時は、相手の機嫌も重要だと思う。
今なら、そこまで悪くないと思う。
意を決して、ポケットからそれを取り出した。