宛先不明ですが、手紙をしたためました。
声の主、親友の楓に手を掴まれたまま、靴箱まで全力で走らされた。
そして、2人とも息を切らし、しゃがみ込む。
「ちょ……と、楓……何? 」
息が整わないうちに、私が言うと楓はこちらを睨み付けた。
「何? じゃないよ。華世、なんで朝から、海藤に捕まってんの!」
「つ、捕まってないよ。私が朝、健太くんと一緒に登校してきたから、それで友達の健太くんに絡んできただけだよ」
「健太くん?」
「蜂矢 健太くん」
「ああ、最近、海藤の隣に居る人ね」
「そうそう」
理解してくれた楓は数回、頷いた。
しかし、直ぐにピタッと動きを止める。
「じゃあ、その蜂矢くん本人は、どこ行ったの」
「野球部の部室に、何か取りに行ったみたい」
私の何も気にしない返答に、楓は溜め息を吐いた。
「本当に海藤は、気をつけた方が良いよ」
「楓、海藤くんと何かあったの?」
「気にくわないだけ。とにかく関わらない方が良いよ。忠告はしたからね」
そう言って、先に歩いて行ってしまう。
表情は不機嫌極まりない様子で、これ以上は何も突っ込んではいけない気がした。
楓は海藤くんの事となると、いつもこうだ。
でも、私は彼女が海藤くんを嫌う理由を、知らない。
落ち着かない気持ちのままで、彼女を追いかけた。