宛先不明ですが、手紙をしたためました。
1通目_.・*...〆
大事なことの伝え方
2限目が終わり、開放的な気分になった生徒たちが次々に立ち上がる。
一度にざわめき出す教室。
その隅の席で、次の授業で必要な教科書を準備していた。
「はなよー」
自分の名前を呼ばれた方を振り向く。
そこには、駆け寄ってくる親友 楓の姿があった。
「ちゃんと次の準備してるんだ。真面目だねぇ、華世は」
私の頭を撫でると、空いていた私の前の席に腰を下ろす。
「形だけね」
「そんなことないでしょー。成績、良いじゃん。嫌味ですかー?」
「そんなつもりじゃないって」
冗談を言って、笑い合える仲である楓とは、高校からの付き合いだ。
あれは入学して、初めて教室に入った日のこと。
席が偶然、前後だった。
それだけだったのに、すぐに打ち解けて、それからずっと一緒に居るようになった。
何の話をして、打ち解けたのかすら、覚えていない。
正面で私をニコニコと見つめる、そんな彼女は、うっとり見惚れる程に美人だ。
前世で何をしたら、こんなに顔立ちが整ってしまうのだろう。
おまけに身長も高くて、組まれた足もすらりとしていて美しい。
それに比べ、私は至って普通だ。
こんなに綺麗な子と並んで歩くなんて、少し恐縮してしまう。
でも、私の机に悪戯っ子の顔をして、シャーペンで落書きを始める姿を眺めていると、そう思うのも失礼な気がした。