宛先不明ですが、手紙をしたためました。
「そしたら、あなたがよくラブレター渡しの代行してるって、聞いたことがあったから。ねぇ、頼めないかな」
ラブレターを握り締めている女の子に、目をやる。
これで、もし私が渡したら、この気の強そうな子から、更に私を経由してしまうことになる。
この子の気持ちは、かなり遠回りで彼に伝わってしまう。
この子は、それで本当に良いのだろうか。
断ること前提で、返す言葉を探す。
私がもたついていると、先に楓が前に出そうになっていた。
「いい加減にして。華世はもう──」
「楓。ちょっと待って」
私が声を発して止めたとき、楓は目を見開いて驚く。
「私から言わせて」
「珍しい。華世が、そんなハッキリ言うなんて」
「楓が教えてくれたんでしょ? 『簡単じゃないから、大事なことなんだ』って」
人に、はっきり言うのは苦手だ。
そう言える人には心底、憧れてきたけど、怖じ気付いてしまうのだから、仕方が無い。
緊張で構えている私の心臓は、忙しなく脈を打っている。
「ごめんなさい。もう、こういうことは止める、って決めてて」
「……渡してくれないって、こと?」
気の強そうな子が、眉をひそめる。
思わず、足がすくんだが、怯んでも居られない。
鼻から、空気を吸い込んだ。
「……うん」