宛先不明ですが、手紙をしたためました。
「出来た……!」
完成した落書きは、可愛らしいパンダが大きなハートを抱え、そのハートの中には私達、2人の名前が書かれていた。
「ちょっと。人の机にがっつり描いちゃって、もうー」
「絶対、消さないでよ」
「消さないけどさぁ」
本当は、並べて書かれた名前も、愛嬌のあるパンダのイラストも嬉しい。
例え、楓が美人で近寄り難い印象であっても、私が一緒に居たいから居る、それだけで十分だ。
親友なのに、比べること自体が、もう可笑しい。
「ねぇ、今日、帰りに駅前のジューススタンド行きたい」
「あれ? バイト休み?」
「うん。今が旬のごろごろ丸ごと苺、飲みたいの。ねぇ、行こうよ」
「分かった。いいよ」
「やった!」
ガッツポーズで喜ぶ楓を笑っていると、2人組の男子生徒に声を掛けられた。
「栗山さん」
見上げると、同じクラスの爽やかイケメンで人気のある海藤くんと、幼馴染みの蜂矢健太くんが立っていた。
呼び掛けてきたのは、海藤くんの方だ。
「は、はい!」
「ごめん。次の授業の宿題、写させて」
海藤くんは拝むようにして、私に頼み込んでくる。