宛先不明ですが、手紙をしたためました。
「お母さん達ってさ……」
「うん?」
「再会して、その日に直ぐ、付き合ったの?」
すると、お母さんの顔が一気に赤くなった。
「な、何……急に」
「気になるの」
私が詰め寄ると、お母さんは分かりやすく戸惑う。
「ねぇ」
「うーん……仕様がないな」
食器を片付け終わると、お母さんはリビングにある本棚から、1冊の手帳を取り出した。
そして、その手帳に挟まれていた、ノートの切れ端のような紙切れを私に見せる。
「直ぐに付き合った訳ではなくて。お父さんが、こんなメモ書きというか『手紙』をくれたから、また繋がりを持てたんやと思う」
「手紙……」
「そう。これが無かったら『お久しぶりです』だけで終わってたかもしれやんから。華世とも出会えやんかったかもね」
私が手に持つ紙切れには、殴り書きで数字だけが書かれていた。
おそらく、携帯の番号。
差出人も宛名も省いた、本当にただのメモ書き。
こんな物でもお母さんは、いつまでも大事にしまって置いてあったらしい。
大切な人からもらった手紙は、一生の宝物になる。
やっぱり、手紙は誰が渡すかが、一番重要なのだと思い知らされる。
その時、不意にリビングの扉が開く。