宛先不明ですが、手紙をしたためました。
「ただいま」
入ってきたのは、お父さんだった。
ネクタイを緩める、その表情は疲れている筈なのに明るい。
「え! あっ、おかえりなさい」
「お父さん、おかえり」
普段通りの娘の私と、慌てるお母さんを交互に見るお父さんは不思議そうにしている。
お母さんは慌てて駆け寄り、スーツのジャケット、ネクタイと鞄を受け取っている。
すると、お父さんがお母さんの顔に、手を伸ばした。
「華さん、顔赤くない?」
「だ、大丈夫」
そう言って、お母さんはその手を躱して、逃げるように他の部屋へと出ていった。
相変わらず、うちの両親は娘の前で、見せ付けてくれる。
こちらまで恥ずかしくなるから、少しは控えてほしい。
いくら憧れとは言えど。
「え、お母さん、本当にどうしたの」
「……大丈夫。照れてるだけ」
「ほぉ、何の話してたの」
「お父さんの話」
「ほぉほぉ、何それ」
私の答に、お父さんは興味津々で居る。
何年経っても、初々しい両親は不思議な程だ。
「ねぇ、お父さん」
「ん?」
シャツの手首のボタンを外しながら、お父さんが私に視線を向ける。
「2人が、いつまでも仲良く居られる秘訣は何?」
お父さんも、お母さん同様に顔を赤くする。