宛先不明ですが、手紙をしたためました。
「知りたいの? そんなこと」
「うん。知りたい」
お父さんはグッと言葉を詰まらせた後、頭を掻いた。
「ええ……。秘訣は、無いかもしれない」
「え。そんな訳ないでしょ」
「本当に無い。俺らは空白の時間が長過ぎたから、今、それを埋めてるだけ。それだけ」
「空白?」
「学生時代、お互い、想い合ってたくせに、自分の気持ちにわざと嘘吐いて、すれ違って、離れてしまったけど」
その瞳には後悔を滲ませていても、それでも明るく、前向きだ。
「気持ちって、年月重ねれば、変わるって思うでしょ」
「……分からない」
「そっか。……変わらないよ、たった1人しか居ない大切な人だって思うから」
あまりにも幸福そうに目尻を下げるから、こちらまで、むず痒くなる。
そんな私に、ニッと笑う。
お父さんのいつもの決まった笑い方。
「お母さんとの空白は、一生かけても埋まらない。とても幸福なことだと思う」
2人って、本当に凄い。
2人共が、この話題を出した途端、同じように優しい表情になる。
強い愛……じゃない。
これは、この2人の中にしか存在し得ない、特別が過ぎる愛なんだ、きっと。
──いいな。
純粋に羨ましい。
憧れではあるけど、私にもそんな人が現れるのか、と考えると、自信が無くなる。
心から悶える程の恋をしたこともない私には、難しい気がしてきた。