宛先不明ですが、手紙をしたためました。
迷子な私の受取人
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ある日の放課後。
今日は楓がバイトの為、1人で帰ることにした。
何もせずに帰る私は、お察しの通り、帰宅部である。
仮入部で美術部に行ってみたものの、画力も残念で、特に興味が有るわけでもない私には、向いていないと悟った。
『絵に上手い、下手は無い。その人の感性であるから』
私が小学生の頃、絵にいまいち自信の持てない私へ母親が言ってくれた言葉。
中学生の時、母は美術部だったそうで、母もまた、その頃に顧問の先生から言われた言葉なのだと教えてくれた。
そして、ずっと美術部で居た母は、絵を描くことや芸術に関することが、好きだったのだろう。
でも、生憎、私はそうではないので、美術部に入ること自体、選択肢に入れなかった。
他の部活を考えてみたって、どれもピンと来なかったので、結局、どこにも入らず、アルバイトをすることにした。
社会勉強のつもりなら、丁度良いと思ったのもある。
そんな何となくで始めたアルバイトも、実際のところ楽しい。
それは、運良くオーナーが良い人だったから。
私のバイト先は、小さなカフェだ。
私はそこに基本、土日祝や、夏休みなどの学校が無いときに出させてもらっている。
そんな都合の良い条件を受け入れてくれる、優しい環境なのだ。
そして、今週の日曜日は、シフトが入っている。
その日に、楓がカフェに遊びに来てくれると言っていた。
それが楽しみで、今からワクワクしている。