宛先不明ですが、手紙をしたためました。
寝起きすぐにやって来た問いに、 思わず、まぬけな反応をしてしまう。
「分からないか?」
「いえ! えっと……x分の1です」
「正解。そうだな。それでは、次の問5をーー」
上手く切り抜けられたようだ。
安堵の溜め息を吐く。
5限目の授業は良い具合にお腹も膨れ、否応なしに眠気を誘う。
その上、数学ときた。
もう、それは私に「ぐっすり眠れ」と言っているようなものだ。
私は1人で納得する。
それにしても、さっき見た夢の内容。
状況は違えど、実際に交わしたことのある会話な気がする。
この台詞、私が中学生の頃、彼に向かって、本当に吐いた。
ここから、彼とぎくしゃくするようになったことは確かだった。
私のことが元々、気に入らないから、意地悪をしてくるのだと、そればっかり思っていた。
私のアルバイト先であるカフェに、先日、楓が訪れてくれたときの言葉を思い出す。
『好きな子の気を引きたくて、いじめちゃうって』
そんなことある訳ない。
数字と記号だらけの黒板と、一生懸命にらめっこする健太くんの姿を眺めた。
真剣な表情が妙に、ぐっとくる。
なんだか不思議なくらい、胸をギュッと掴まれる感覚に陥る。
この感覚は「切ない」に限りなく近い。