宛先不明ですが、手紙をしたためました。
「いやいや、そんな大袈裟だよ」
「大袈裟なことあるもんか! 大切なことだよ」
にこやかな楓の瞳の奥は、至って真剣で。
思わず、引き込まれてしまい、黙り込んでしまった。
「過去の出来事も華世の中では、嫌な出来事だったかもしれない。蜂矢くんが今、あんな風に優しくなれるのは、後悔してるからじゃない?」
「後悔?」
「気持ちが少しでも成長して、関係をやり直したいから華世に優しくするんだよ」
「そうなの、かな?」
「そうに決まってる」
楓は言い切る。
それが不思議でならない。
「何で、そこまで自信満々なの」
「え、だって……さっきの蜂矢くんの顔見た? 見てるこっちが恥ずかしくなるくらい、優しい目してたよ」
「見てないよ、そんなの……」
「蜂矢くんの顔、溶けちゃいそうだったよ」
私が顔を上げられない間に、健太くんがそんなことになっていたなんて。
思いもよらなかった。
楓は相変わらず、私に見せるニマニマ顔を見せる。
「昔がああだったから、あの人は駄目って決めつけるなんて、良くない。印象に縛り付けられたせいで、自分の本当の気持ちを隠しちゃうなんて、馬鹿げてる」
表情と台詞が全くもって、伴っていない。
それでも、楓の言葉はいつでも、胸に響く。
私を思ってくれてのことだから。
楓が私を大切に思ってくれる気持ちが、私の大切な気持ちの在り方を気付かせてくれた。