宛先不明ですが、手紙をしたためました。



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昼食を終えると、昼からの5限目の授業の前に掃除の時間がある。

いつも通り、班の違う楓とは離れてしまい、現在一人ぼっちだ。

一人ぼっちでゴミ袋を片手に2袋ずつ、合計4袋携えている。

別に重くはない。

これを校内のごみ捨て場まで運ぶ、いつも通りのなんてことない、実に楽な作業だ。

そうして、もうすぐ裏庭へと差し掛かるところだった。

遠目で見えた裏庭のベンチには、誰かが横たわっている。

これも見慣れた光景だ。



「あ。栗山さんだ」



この台詞にも聞き慣れてしまった。



「海藤くん……。掃除、いつになったら、真面目にするの」

「うーん、まぁ。そのうち?」



だらけた彼の返事は、一度に現実に戻される心地がする。

どれだけ顔が良かろうと、自堕落な人は、私は受け入れられないらしい。

いや、私だけではないか。

きっと、たくさんの子達が騙されている。

海藤くんには申し訳ないが、あくまで観賞用だ。

目の保養であることは、確かなお顔立ちだから。

とりあえず、1往復半で会話は、きっちり済んだと思い、その場を後にしようとした。

しかし、不意に海藤くんは立ち上がり、私の通り道を塞いだ。



「え、ちょっと、通してよ」



私が右へ逸れれば、ついてくる。

私が左へ逸れても、同じようについてくる。


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