宛先不明ですが、手紙をしたためました。
助かった、と笑うと、いきなり抱き寄せられた。
そして、そっと頭を二度撫でられる。
さっきまで、あれ程、怖がっていた私なのに。
ひどく落ち着く。
少し縋り付くと、不意に耳元で囁かれた。
「怖い思いする前に、間に合わなくて、ごめん……華世ちゃん」
それを私は聞き漏らさなかった。
健太くんの胸から、自分の顔をガバッと引き剥がす。
「い、今、健太くん、私のこと、名前で、ちゃんって……!」
「ぐっ……! じゃあ、今更、何て呼べば良いんだよ」
相変わらず、赤面して困り果てている健太くんは、やはり可愛い。
「ごめん、ごめん。そのままで良いよ。そのまま名前で呼んでほしい」
「……でも、よく考えたら、教室で俺から名前呼びしたら、また海藤に目付けられそう」
「確かに……。それは健太くんの言う通りかも」
今回の海藤くんの変化のきっかけは、よく考えれば、とても分かりやすかった。
『「健太くん」とは、ちょくちょく話せるのにね?』
『俺、栗山さんの笑顔が好きなんだ。『健太くん』じゃなくて、俺にだけ、これからは俺にだけ笑いかけてよ――』
先程まで、ここに居た彼の言葉を頭の中で、静かに再生する。
どこをとってみても「健太くん」が引っ掛かっているようだ。
私が納得して頷くと、健太くんは急に真剣な表情に戻り、私に忠告した。
「華世ちゃん。今、海藤のお気に入りになってるから、あんまり近寄らない方が良い。二人きりになったら駄目だ、絶対に」