宛先不明ですが、手紙をしたためました。
私に物理的に絡み付く楓と、私のやり取りに健太くんが「ふはっ」と息を吐くように笑った。
私たち2人は、彼の笑いに目を奪われる。
「よく分かる」
爽やかな反応に、私の胸が高鳴る。
彼が妙に輝いて見えるから、可笑しい。
「ちょっと、華世! 蜂矢くんって、意外と爽やかイケメンじゃん!」
「それは無いっす」
楓の言葉に、少しモヤッとしてしまう自分が居た。
健太くんの良さが、いろんな人に伝わるのは嬉しいけど、ちょっと淋しい感覚。
「そ、それよりも楓! 先手って、何? 私もそこを聞きたい」
私は大人げなく、でも、出来るだけ笑顔を作って、話題を逸らした。
「先手?」
健太くんも、関心を寄せてくれた。
すると、楓も本来の目的を思い出してくれたようで、ようやく切り出してくれる。
「そう! 私たちだけでは、悔しいけど太刀打ち出来ないから、お友達の力をお借り出来たらな、っと思って」
言われた内容を全く呑み込めない様子の健太くんは、首を傾げた。
「友達……?」
「同じクラスの海藤……くんのことです。今日、華世から昨日の出来事を教えてもらって。このままじゃ、華世は海藤、くんにまた、何かされてしまうんじゃないか、って不安なんです。それで、お友達である蜂矢くんからも、一言何か言ってもらったりしてもらえないかなって、思って……」
楓の力説が終わったところで、沈黙が訪れる。
誰も喋ろうとしない。