宛先不明ですが、手紙をしたためました。
渡すタイミング
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「お願い! 栗山さん、私、本当に好きなの……!」
ある日の昼休み。
他所のクラスの名前も知らない女の子に突然、空き教室に呼び出され、その子と二人きりで居た。
この空き教室は、昔、社会科の準備室として使われていたらしい。
たった今、そこで私は女の子からピンクの便箋を差し出されて、戸惑っていた。
「あの、こういうのは、困るというか……」
「そんなこと言わないで。本当に、こんなに好きなのに、駄目なの……?」
「う……」
女の子は上目遣いで、私に懇願する。
そんな顔をされると、非常に断りにくい。
どんどん詰め寄られ、いつの間にか背後に壁があり、それ以上、後ろには下がれなくなっていた。
私がいつまでも煮え切らない態度で居ると、彼女に誤解をさせてしまう。
――彼女の本気の気持ちを無下に扱うのは、気が引けてしまうけれど、仕様が無い、よね?
だって、特別な気持ちなら、正しく伝えてほしいから。
「――ごめんね。そういう大事なことは、尚更のこと、あなたが直接、海藤くんに渡した方が気持ちが伝わるんじゃないかな? 」
私が言っても尚、彼女は瞳に涙を溜めている。
「……でも、クラスの子たちがD組の栗山さんに頼めば、渡してくれるって」
「な、なに。その噂」