宛先不明ですが、手紙をしたためました。



思わず、小さな悲鳴を上げたと同時に、教室中にドカンッと大きな音が響き渡った。

その瞬間の海藤くんの驚き方といったら、まるでお手本通りのようだった。

とは言え、事情を知っている私でさえ、あまりの豪快さに、これには驚く。

掃除用具入れのロッカーから、大きな図体の健太くんが飛び出したのだから。



「はっ、蜂矢……。お前、そんなところで何してんだよ」

「体調不良で、寝てた」

「はぁ?! 意味分かんねぇよ!」



私も2人のやり取りをぼんやり聞いていると、次は教卓の下、私たちの足下から声がした。



「もー、蜂矢くん。部活、休んだ理由、そこまで真面目に活用しなくても大丈夫だってば! あははっ」



教卓の内側に隠れていた楓が、お腹を抱えて、大笑いしながら登場する。

そして、私の腕を素早く掴み、引き寄せれた。

――これだけの面子に見られていると分かったら、何も出来ないでしょう?

私の中では、勝ち誇ったつもりでいた。

それなのに、海藤くんが発したのは――。



「かえでちゃんまで、なんでここに……」

「私の名前を呼ぶな! 鳥肌ーっ!!」



楓が発狂する。

私と健太くんは、咄嗟に耳を塞いだ。

それにしても、先程まで私にちょっかいをかけていたくせに、もう目移りとは呆れた。

もはや軽蔑するレベルだ。

しかも、先程までは私に対しては、上から物を言う姿勢だったくせに、今のあれは何だ。

ひどく慌てている。


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