宛先不明ですが、手紙をしたためました。



私の頷きを見て、お父さんは付け加える。



「でも、自分の嫉妬心を抑えるのって、大変なことでさ。お母さんだって、職場の上司と良い雰囲気になってる頃もあったらしいよ。それも俺と再会した後も。でも、職場も違うし、そもそも本人の意思で決めることなんだから、俺がとやかく言えることじゃないじゃん?」

「そうだったんだ。お母さん、モテモテじゃん。でも、勝ったんだね、お父さんは。その上司の人に」

「そう言われると、気持ち良いかもな。ただ、お母さんは勝敗の景品じゃない。……華さんが、俺を選んでくれたんだ」



お父さんに、そう言われて初めて、恥ずかしくなる。

相手有りきのことだからこそなのに、まるで自分自身が主であるように相手のことを、つい言ってしまった。



「あと。まだまだライバルも居て……」



恥ずかしがって、黙り込んでしまった私を気遣ってか、お父さんは話題のズレなどは気にせず、続ける。



「お母さんは好きなものも、たくさんあるからなぁ。俳優、アニメ、声優、バンド、小説に特撮ヒーロー……。お父さんだけの方を向いてもらうのは、当時でも、難しかったなぁ」

「なんか、それを聞くと、ちょっと違う気もする」

「違うかな」

「うん。お母さんにとって、お父さんは『好きなもの』とは別物だよ。そうじゃなくて『大切な人』なんだと思うよ。実の娘に言われるのも、気色悪いと思うけど」


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