記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
キッチンに向かい私はケトルの電源を入れてから、カップに妊娠中も飲めるというノンカフェインの紅茶を淹れた。

紫苑は私に過去の話をしてくれたり、英語を教えてくれたり、妊娠中にやらないほうがいいことや、食べないほうがいいものなど、いろいろと教えてくれた。

今の私には覚えることが多くて、あれこれじっくりと思いだそうと努力する作業ができていない。

両親が亡くなっていたという衝撃的な事実を知って、心がうまく追いつかなかったのある。

この数日間、紫苑は常に私の隣にいて、私に寄り添ってくれていた。
改めて両親の死に向き合う私が、立ち直るのを隣で支えてくれた。

私はとっくに彼に恋をしていて、もっと彼を知りたいと思い始めている。
でも、彼のことを知るための力も、数日はわかなかった。

私のキャパを知っているらしい紫苑は、無理に過去を教えようとしたり、英語や妊娠について話そうとはしないでいてくれた。
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