記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
消毒の香りのする彼の胸の中で涙をとめられない私。

「大丈夫。大丈夫。そばにいる。大丈夫だよ。桐乃。大丈夫。」
何度も何度もそう言ってくれる彼の言葉やぬくもりに、なぜか緊張していた心がほぐれるのは、やっぱり私の心の奥底で、”私”が確かに存在しているからだろう。

この半年の間に、いったい私は何があったのだろうか。
どんな人生を歩んだのだろうか。

知りたい気持ちは大きい。

でも同じくらい・・・
このまま記憶が戻らなかったら・・・という不安に襲われる。

記憶をたどろうとしてももやがかかってしまったように、一部分だけ見えないものがある。
いつか・・・見えるのだろうか・・・。
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