記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「愛してる、桐乃。」
「・・・」
再び私を抱きしめる彼の背中に手をまわすことは、今はできない。
心が震えて、彼を覚えていても、私の記憶に彼はいない。
思い出せない記憶が、私の体を支配している今、彼の背中に手をまわすことはできない。
体と心がばらばらになっている今、彼の胸に全力ですがることもできない。
でも・・・
今は瞳を閉じて、彼のぬくもりに体をゆだねる。
それだけで、なぜか呼吸ができるような気がする。
安心して目を閉じることができる。
ここだけは安全だと、私の中の私が言っている気がした。
「・・・」
再び私を抱きしめる彼の背中に手をまわすことは、今はできない。
心が震えて、彼を覚えていても、私の記憶に彼はいない。
思い出せない記憶が、私の体を支配している今、彼の背中に手をまわすことはできない。
体と心がばらばらになっている今、彼の胸に全力ですがることもできない。
でも・・・
今は瞳を閉じて、彼のぬくもりに体をゆだねる。
それだけで、なぜか呼吸ができるような気がする。
安心して目を閉じることができる。
ここだけは安全だと、私の中の私が言っている気がした。