記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「君の名前は新田桐乃。俺、新田紫苑と結婚して、新田になった。俺のこと、思いだせない?」
私の手を握ったまま言う”紫苑”と名乗るその人。
握られている手が熱いのは、私の体温が上がっているからじゃない。
手を握る紫苑の手が熱いからだ。

「俺たちは半年前に出会って、3か月前に結婚した。今、君のお腹には俺たちの子供がいる。」
紫苑と名乗るその人は、優しい瞳になり私を見つめる。
その距離が近い。

「ここはニューヨークの医科大学。俺が勤めている病院で、桐乃は事故に遭ってここに運ばれてきた。3日間、意識がなかったんだ。心配した。」
片方は私の手を。もう片方は私の頬に触れる紫苑。
「記憶は一時的に失ってるんだと思う。頭をぶつけて、少しだけ頭蓋内出血を認められた。オペするほどじゃないけど、しばらくは安静にして様子をみないとならない。今、君は妊娠しているから使える薬も限られているんだ。2、3日入院して経過を診て退院になる。」
「・・・っ・・・」
思い出そうとすると、急に頭が痛んだ。
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