記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される

その先に、リングがふたつ。

「仕事柄俺も毎日つけていられるわけじゃなかったんだ。事故のあと、体がむくんで外れなくなる可能性があったから、桐乃の指輪も一緒にさげてた。」
紫苑はそう言ってネックレスを外すと、自分の指に、大きなサイズの方のリングをはめた。

私は自分の指に指輪をはめるのかもしれないと、紫苑の動きの続きに少し緊張する。

動きを見ていると、彼はそっと私の首に自分が外したネックレスをつけた。

「ここに付けるのは、まだかなって。」
ぎこちなく微笑みながら紫苑は私の左手の薬指に触れる。

紫苑の左手の薬指にはきらきら光る指輪。
でも、ペアであるリングは私の指には光らない。

指輪の距離が、今の私たちを表しているような気がした。