記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「・・・・・」
何とも言えない脱力感。
メイクをするだけで体力を使うなんて知らなかった。

思わず、手をとめてベッドに体を横にする私に、紫苑は心配そうに近づいた。
「気分悪い?」
「・・・少し・・・」
まだつわりのある私。
事故の原因にも考えられる貧血の治療用に薬も処方されているのに、一向に体調は回復しない。

「住んでるマンションはここから車で10分くらいなんだ。桐乃のタイミングで病院から出られるように手続きしてあるから。少し休む?」
「・・・早く・・・帰りたい・・・」
目を閉じたまま言う私に、紫苑は「了解」と頭を撫でてくれる。

「続きは任せて。」と目を閉じたままの私に、紫苑は器用にメイクの続きをしてくれる。
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