記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
新しい日々
見たことの無い景色が流れるように視界に入ってくる。

病院をあとにして、私たちはタクシーに乗り込みマンションへと向かっていた。
紫苑はずっと私の背中に手をまわして、抱きしめてくれている。

「10分くらいかかるんだ。少し休んで。」
私の頭をそっと自分の肩の方に傾ける紫苑。

「・・・ありがとうございます・・・」
目に入ってくる知らない景色に、少し頭痛がしていた私は紫苑の肩にすべてをゆだねるようにもたれて目を閉じる。

目を閉じていても、紫苑の心配そうに私を見つめる視線を感じる。
「眠っていい。着いたら起こすから。」
「・・・はい・・・」
私は両手を自分のお腹の前にあわせる。
動いてる・・・。まるで私を励ましてくれるような赤ちゃんの胎動に、あたたかな気持ちになった。
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