記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「行こう。」
紫苑にエスコートされながら私たちはエレベーターに乗り込む。
タクシーのドライバーも荷物を持って一緒に乗りこむ。

「・・・っ・・・」
エレベーターが動き出すと、ズキンと頭が痛んで私は思わず手を頭にもって行った。

「痛むか?」
「・・・・はい・・・」
目を閉じて痛みに耐える私の体を紫苑がギュッと抱き寄せて、自分の体に寄りかかれるようにしてくれる。

「もう少しの辛抱だ。」
「・・・」
彼の言葉に返事をする余裕すらない私。
エレベーターが目的の階に着くと、彼は素早く玄関の扉を開けて、私を中に入れてくれた。
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