記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
『ありがとう。荷物はここにおいてください。』
紫苑は玄関の中に入り立ち止まると、私の体を片手で支えながらタクシーのドライバーにお金を渡した。

ドライバーが家から出ると、自動で玄関のドアはロックされて、彼は私の靴を脱がせると、部屋の中に案内してくれた。

「横になって休もう。その前に着替えられる?」
返事をする気力がわかなくて首を横に振ると、彼は私の体を軽々しく抱き上げた。

「おかえり。」
耳元でささやきながら、頭の痛さに目を開けられない私をどこかへ運んでくれる。

ふわっとした場所に優しくおろされて、彼の体と離れた瞬間、少しだけ目を開ける。

「ここ・・・」
「ん?」
部屋のカーテンを閉めていた紫苑が私の声に振り向く。
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